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十字架の道行の祈

昭和23年発行 公教会祈祷文

■十字架の道行(みちゆき)の前の祈(いのり)

Christ on the Cross. 1620. Oil on canvas. Koninklijk Museum voor Schone Kunsten, Antwerp, Belgium / Peter Paul Rubens 救い主イエズス・キリスト、主はわれらを罪よりあがなわんためにエルザレムにおいて残酷なる苦しみに遭い、恥辱を受け、十字架を担いてカルワリオに登り、衣をはがれてくぎ付けにせられ、二人の盗賊の間に挙げられて死し給えり。われ主のかく苦しみ給える地にもうで、御血(おんち)に染(そ)みたる道を歩みなば、鈍きわが心も主の愛の深きをさとりて感謝に堪えざるべし。また主の御苦難の原因なるおのが罪の重きを知りて、たれか痛悔の情(じょう)を起(おこ)さざるものあらん。われかかる幸いを得んと欲すれども能(あた)わざれば、かの地のかたみなるこの十字架の道を歩まんとす。されどわれもし聖寵(せいちょう)をこうむらずば、愛と痛悔との情を起す能わざるにより、願わくは御(おん)恵みをくだして、主の御(おん)苦しみをわが心に感ぜしめ、かつて聖母マリアおよび主の御跡(おんあと)を慕いし人々の心に充(み)ちあふれたる悲しみをば、わが心にもしみ透(とお)らせ給え。またわれをして今より深く罪を忌みきらいて全くこれを棄て、愛をもつて主の御慈愛に報い、主の御(おん)ために、苦難を甘んじ受くるを得しめ給え。なおこの十字架の道を、ふさわしき心もて行く人々に施さるる贖宥(しょくゆう)をわれにも、また煉獄(れんごく)に苦しむ霊魂にも、与え給わんことをひとえにこいねがい奉(たてまつ)る。

 ああ聖母よ、▲十字架にくぎ付けにせられ給える御子(おんこ)の傷を、わが心に深く印し給え。


■第一留(りゅう) イエズス死刑の宣告を受け給う

 ああキリストよ、主は尊き十字架をもつて世をあがない給いしにより、▲われら主を礼拝し、主を讃美し奉る。

 人々は主を捕えてカイファのもとに引き行き、あざけり、御顔(おんかお)につばきし、打ちたたき、次いでピラトの裁判にわたせり。ピラトは群衆の心を和らげんとて主を石の柱に縛りつけ、むち打ち、ついにいばらの冠を御頭(みかしら)に押しかぶせければ、傷つき血流れたり。されど群衆は少しもあわれと思わずして、なおも十字架に掛けよ、十字架に掛けよと大いに叫びたりしかば、ピラトもせん方(かた)なくて主に死罪をいいわたすにいたれり。

 ▲主イエズス・キリスト、主を死刑に処せしは、ピラトとユデア人(びと)とにあらず、ひつきようこれわれらの罪の業(わざ)なり。われら今(いま)罪を犯す毎(ごと)に、主に大いなる苦痛を加え、不当の宣告を受けさせ奉るなり。よりてわれらの罪の罰を赦し給わんことを、ひたすら願い奉る。アーメン。

(主祷文) 天にましますわれらの父よ、願わくは御名(みな)の尊まれんことを、御国(みくに)の来らんことを、御旨(みむね)の天に行わるるごとく地にも行われんことを。▲われらの日用(にちよう)の糧を、今日(こんにち)われらに与え給え。われらが人に赦す如く、われらの罪を赦し給え。われらを試みに引き給わざれ、われらを悪(あく)より救い給え。アーメン。

(天使祝詞) めでたし、聖寵(せいちょう)充ち満てる(みちみてる)マリア、主(しゅ)御身(おんみ)と共にまします。御身は女のうちにて祝せられ、御胎内(ごたいない)の御子(おんこ)イエズスも祝せられ給う。▲天主の御母(おんはは)聖マリア、罪人(つみびと)なるわれらのために、今も臨終の時も祈り給え。アーメン。

(栄唱) 願わくは、聖父(ちち)と聖子(こ)と聖霊とに栄えあらんことを。▲始めにありし如く、今もいつも世々にいたるまで。アーメン。(読み方: 「聖父」=「ちち」、「聖子」=「こ」、「聖霊」=「せいれい」)

 主われらをあわれみ給え。▲われらをあわれみ給え。
 願わくは死せる信者の霊魂、天主の御(おん)あわれみによりて安らかに憩わんことを。▲アーメン。

 ああ聖母よ、▲十字架にくぎ付けにせられ給える御子(おんこ)の傷を、われらの心に深く印し給え。


■第二留 イエズス十字架を担い給う

 ああキリストよ、主は尊き十字架をもつて世をあがない給いしにより、▲われら主を礼拝し、主を讃美し奉る。

 人々は主を外に引き出(い)だし、荒木(あらき)もて作れる十字架をかしこくも主の肩に打ち掛くるや、主は御身の傷をもいとい給わず、すこしも拒み給う御気色(みけしき)なく、引き寄せてこれを担い、柔和にして、堪忍深き御姿(みすがた)にてかれらの後(あと)より歩ませ給う。

 ▲主イエズス・キリスト、主は十字架を担い給うべきにあらず。罪人(つみびと)なるわれらこそ、十字架を担うべき者にはあるなれ。さればわれらは主の御旨(みむね)によりて、罪を償(つぐの)うがために、この世の苦難を受くべき者なれば、主を鑑(かが)みとして、柔和堪忍をもつてこれに耐えしめ給わんことを、ひたすら願い奉る。アーメン。

(主祷文) 天にましますわれらの父よ、願わくは御名の尊まれんことを、御国の来らんことを、御旨の天に行わるるごとく地にも行われんことを。▲われらの日用の糧を、今日われらに与え給え。われらが人に赦す如く、われらの罪を赦し給え。われらを試みに引き給わざれ、われらを悪より救い給え。アーメン。

(天使祝詞) めでたし、聖寵充ち満てるマリア、主御身と共にまします。御身は女のうちにて祝せられ、御胎内の御子イエズスも祝せられ給う。▲天主の御母聖マリア、罪人なるわれらのために、今も臨終の時も祈り給え。アーメン。

(栄唱) 願わくは、聖父と聖子と聖霊とに栄えあらんことを。▲始めにありし如く、今もいつも世々にいたるまで。アーメン。

 主われらをあわれみ給え。▲われらをあわれみ給え。
 願わくは死せる信者の霊魂、天主の御あわれみによりて安らかに憩わんことを。▲アーメン。

 ああ聖母よ、▲十字架にくぎ付けにせられ給える御子(おんこ)の傷を、われらの心に深く印し給え。


■第三留 イエズス始めて倒れ給う

 ああキリストよ、主は尊き十字架をもつて世をあがない給いしにより、▲われら主を礼拝し、主を讃美し奉る。

 主はすでにむち打たれ、いばらの冠に刺(さし)貫かれ給えるほどに、傷あとただれ破れ、あけの血に染(そ)みて歩み給いければ、衰弱のあまり足下(あしもと)よろめき、ついに十字架の重きに堪えずして、傾きかがみ、やがて大地(だいち)に倒れ給う。

 ▲主イエズス・キリスト、主を倒しまいらせしは一(いつ)にわれらなり。われら罪に陥りたるによりて、主はかかる苦難を受け給うなれば、われら深くこれを悲しみ奉る。この御苦難の功力(くりき)によりて、われらを罪より救い給わんことを、ひたすら願い奉る。アーメン。

(主祷文) 天にましますわれらの父よ、願わくは御名の尊まれんことを、御国の来らんことを、御旨の天に行わるるごとく地にも行われんことを。▲われらの日用の糧を、今日われらに与え給え。われらが人に赦す如く、われらの罪を赦し給え。われらを試みに引き給わざれ、われらを悪より救い給え。アーメン。

(天使祝詞) めでたし、聖寵充ち満てるマリア、主御身と共にまします。御身は女のうちにて祝せられ、御胎内の御子イエズスも祝せられ給う。▲天主の御母聖マリア、罪人なるわれらのために、今も臨終の時も祈り給え。アーメン。

(栄唱) 願わくは、聖父と聖子と聖霊とに栄えあらんことを。▲始めにありし如く、今もいつも世々にいたるまで。アーメン。

 主われらをあわれみ給え。▲われらをあわれみ給え。
 願わくは死せる信者の霊魂、天主の御あわれみによりて安らかに憩わんことを。▲アーメン。

 ああ聖母よ、▲十字架にくぎ付けにせられ給える御子の傷を、われらの心に深く印し給え。


■第四留 イエズス聖母にあい給う

 ああキリストよ、主は尊き十字架をもつて世をあがない給いしにより、▲われら主を礼拝し、主を讃美し奉る。

 聖母マリアは御子(おんこ)が死罪の宣告を受け給いしを聞き、急ぎ行き給うほどに、途(みち)にてあい給えり。あわれ天使の御(おん)告げありし昔には似るべくもあらず、あけの血に染(そ)み目も当てられぬ主の御姿(みすがた)を見て深く悲しみ給えども是非(ぜひ)なし。御子の御苦難(ごくなん)に御(おん)みずからの悲しみを添えて、われらのために御父(おんちち)天主に献げ給う。

 ▲主イエズス・キリスト、聖母マリアの御心(みこころ)を悲しませまいらせしは、一(いつ)に罪人(つみびと)なるわれらなり。主は限りなく慈悲深くましませば、幸いにわれらの罪を赦し給え。また主と御母(おんはは)との御心(みこころ)を慰め奉るために、われらに力を尽さしめ給わんことを、ひたすら願い奉る。アーメン。

(主祷文) 天にましますわれらの父よ、願わくは御名の尊まれんことを、御国の来らんことを、御旨の天に行わるるごとく地にも行われんことを。▲われらの日用の糧を、今日われらに与え給え。われらが人に赦す如く、われらの罪を赦し給え。われらを試みに引き給わざれ、われらを悪より救い給え。アーメン。

(天使祝詞) めでたし、聖寵充ち満てるマリア、主御身と共にまします。御身は女のうちにて祝せられ、御胎内の御子イエズスも祝せられ給う。▲天主の御母聖マリア、罪人なるわれらのために、今も臨終の時も祈り給え。アーメン。

(栄唱) 願わくは、聖父と聖子と聖霊とに栄えあらんことを。▲始めにありし如く、今もいつも世々にいたるまで。アーメン。

 主われらをあわれみ給え。▲われらをあわれみ給え。
 願わくは死せる信者の霊魂、天主の御あわれみによりて安らかに憩わんことを。▲アーメン。

 ああ聖母よ、▲十字架にくぎ付けにせられ給える御子の傷を、われらの心に深く印し給え。


■第五留 イエズス、シレネのシモンの助力(じょりょく)を受け給う

 ああキリストよ、主は尊き十字架をもつて世をあがない給いしにより、▲われら主を礼拝し、主を讃美し奉る。

 主はかく歩み行き給うほどに、御気力(おんきりょく)次第に衰えてすでに危うく見え給えり。されど来りて助けまいらする者もなく、かえつてさまざまにののしりたたきたりければ、今ははや堪え難くして沈み入り給わんとす。人々は折しもそこに来合わせたるシレネのシモンに、強いて十字架を助け担わせ、なおも主を駆りて歩ませ奉れリ。

 ▲主イエズス・キリスト、主の十字架を担いて、力弱り給いしは、これ全くわれらの罪の重きが故なり。われらこそシモンに代りて十字架を担うべき者なれば、今より一切の苦難を、主の十字架の分としてわれらに受けしめ給わんことを、ひたすら願い奉る。アーメン。

(主祷文) 天にましますわれらの父よ、願わくは御名の尊まれんことを、御国の来らんことを、御旨の天に行わるるごとく地にも行われんことを。▲われらの日用の糧を、今日われらに与え給え。われらが人に赦す如く、われらの罪を赦し給え。われらを試みに引き給わざれ、われらを悪より救い給え。アーメン。

(天使祝詞) めでたし、聖寵充ち満てるマリア、主御身と共にまします。御身は女のうちにて祝せられ、御胎内の御子イエズスも祝せられ給う。▲天主の御母聖マリア、罪人なるわれらのために、今も臨終の時も祈り給え。アーメン。

(栄唱) 願わくは、聖父と聖子と聖霊とに栄えあらんことを。▲始めにありし如く、今もいつも世々にいたるまで。アーメン。

 主われらをあわれみ給え。▲われらをあわれみ給え。
 願わくは死せる信者の霊魂、天主の御あわれみによりて安らかに憩わんことを。▲アーメン。

 ああ聖母よ、▲十字架にくぎ付けにせられ給える御子の傷を、われらの心に深く印し給え。


■第六留 イエズス御顔(おんかお)を布に写させ給う

 ああキリストよ、主は尊き十字架をもつて世をあがない給いしにより、▲われら主を礼拝し、主を讃美し奉る。

 主はなお歩み行き給うほどに、御体(おんからだ)も御顔(おんかお)もあけの血に染(そ)み給えども人々は少しもあわれまず、ますます荒立ち騒ぎたり。この時ヴェロニカという女群衆のうちより走り出(い)で、主に布を献げければ、主は御(おん)みずから御顔(おんかお)を拭い、尊き御(おん)面影をその布に写して返し授け給えり。

 ▲主イエズス・キリスト、われらの霊魂に聖寵を添え給え。十字架の苦難によりて、われらに御功徳(おんくどく)を移し給え。われら弱き者なれども、ヴェロニカにならい、世のあざけりを顧みず、専ら主を崇(あが)め奉るを得んことを、ひたすら願い奉る。アーメン。

(主祷文) 天にましますわれらの父よ、願わくは御名の尊まれんことを、御国の来らんことを、御旨の天に行わるるごとく地にも行われんことを。▲われらの日用の糧を、今日われらに与え給え。われらが人に赦す如く、われらの罪を赦し給え。われらを試みに引き給わざれ、われらを悪より救い給え。アーメン。

(天使祝詞) めでたし、聖寵充ち満てるマリア、主御身と共にまします。御身は女のうちにて祝せられ、御胎内の御子イエズスも祝せられ給う。▲天主の御母聖マリア、罪人なるわれらのために、今も臨終の時も祈り給え。アーメン。

(栄唱) 願わくは、聖父と聖子と聖霊とに栄えあらんことを。▲始めにありし如く、今もいつも世々にいたるまで。アーメン。

 主われらをあわれみ給え。▲われらをあわれみ給え。
 願わくは死せる信者の霊魂、天主の御あわれみによりて安らかに憩わんことを。▲アーメン。

 ああ聖母よ、▲十字架にくぎ付けにせられ給える御子の傷を、われらの心に深く印し給え。


■第七留 イエズス二度(ふたたび)倒れ給う

 ああキリストよ、主は尊き十字架をもつて世をあがない給いしにより、▲われら主を礼拝し、主を讃美し奉る。

 主の御力(おんちから)は血と共に減り、今は御足(みあし)も進みかね、息たえだえにてうつぶせに倒れ給いぬ。ユデア人(びと)らはなおもあわれまずして打ちたたき、棄物(すてもの)の如く扱いつつ強いて歩ませ奉れリ。

 ▲主イエズス・キリスト、われら御血(おんち)の跡を慕いて、深く愛し奉る。主の二度(ふたたび)倒れ給いしは、われらの悲しむ時に当りて、頼もしき心を失わせじとなり。天に昇る道は十字架の道にて、すなわち苦しみの道なれば、御苦難(ごくなん)の功力(くりき)により、われらをして雄々しき心をもつて、歩ましめ給わんことを、ひたすら願い奉る。アーメン。

(主祷文) 天にましますわれらの父よ、願わくは御名の尊まれんことを、御国の来らんことを、御旨の天に行わるるごとく地にも行われんことを。▲われらの日用の糧を、今日われらに与え給え。われらが人に赦す如く、われらの罪を赦し給え。われらを試みに引き給わざれ、われらを悪より救い給え。アーメン。

(天使祝詞) めでたし、聖寵充ち満てるマリア、主御身と共にまします。御身は女のうちにて祝せられ、御胎内の御子イエズスも祝せられ給う。▲天主の御母聖マリア、罪人なるわれらのために、今も臨終の時も祈り給え。アーメン。

(栄唱) 願わくは、聖父と聖子と聖霊とに栄えあらんことを。▲始めにありし如く、今もいつも世々にいたるまで。アーメン。

 主われらをあわれみ給え。▲われらをあわれみ給え。
 願わくは死せる信者の霊魂、天主の御あわれみによりて安らかに憩わんことを。▲アーメン。

 ああ聖母よ、▲十字架にくぎ付けにせられ給える御子の傷を、われらの心に深く印し給え。


■第八留 イエズス、エルザレムの婦人を慰め給う

 ああキリストよ、主は尊き十字架をもつて世をあがない給いしにより、▲われら主を礼拝し、主を讃美し奉る。

 この時(とき)主の後よりあまたの人々慕い来り、なかにもエルザレムの婦人は涙にむせびて道すがら泣きければ、主はかれらを顧み、御(おん)苦しみを忘れて、慰め宣(のたま)わく『エルザレムの婦人よ、わがために泣くなかれ、なんじらとなんじらの子孫とのために悲しむべし。生木(なまき)すらかくの如くなれば、まして枯木(かれき)はいかにぞや』と。

 ▲主イエズス・キリスト、主は罪なくして苦しみを受け給えり。われらは罪をもつて聖寵を失い、あたかも枯木の如くなれば、必ず地獄の火に燃やさるべき者なり。さればわれらに、おのが罪と人々の罪とのために泣き、痛悔(つうかい)の涙を注がしめ給わんことを、ひたすら願い奉る。アーメン。

(主祷文) 天にましますわれらの父よ、願わくは御名の尊まれんことを、御国の来らんことを、御旨の天に行わるるごとく地にも行われんことを。▲われらの日用の糧を、今日われらに与え給え。われらが人に赦す如く、われらの罪を赦し給え。われらを試みに引き給わざれ、われらを悪より救い給え。アーメン。

(天使祝詞) めでたし、聖寵充ち満てるマリア、主御身と共にまします。御身は女のうちにて祝せられ、御胎内の御子イエズスも祝せられ給う。▲天主の御母聖マリア、罪人なるわれらのために、今も臨終の時も祈り給え。アーメン。

(栄唱) 願わくは、聖父と聖子と聖霊とに栄えあらんことを。▲始めにありし如く、今もいつも世々にいたるまで。アーメン。

 主われらをあわれみ給え。▲われらをあわれみ給え。
 願わくは死せる信者の霊魂、天主の御あわれみによりて安らかに憩わんことを。▲アーメン。

 ああ聖母よ、▲十字架にくぎ付けにせられ給える御子の傷を、われらの心に深く印し給え。


■第九留 イエズス三度(みたび)倒れ給う

 ああキリストよ、主は尊き十字架をもつて世をあがない給いしにより、▲われら主を礼拝し、主を讃美し奉る。

 主はカルワリオの上にいたりてまた倒れ給う。そは人々がかかる苦難を無益になさんことを思い給い、御心(みこころ)細(ぼそ)きあまり、深く悲しみ給えばなり。されど主はいずこまでも人々を助けんとて苦難を耐え忍び給う。

 ▲主イエズス・キリスト、主は何故(なにゆえ)に幾度(いくたび)も倒れ給いしぞ。これ全くわれら幾度(いくたび)も罪を犯し、たとい痛悔を起(おこ)すとも、また重ねて罪に陥るが故なり。主は三度(みたび)の後(のち)は倒れ給わず。さればわれらをして、主の御功力(おんくりき)によりて、この後(のち)再び罪を犯さざらしめ給わんことを、ひたすら願い奉る。アーメン。

(主祷文) 天にましますわれらの父よ、願わくは御名の尊まれんことを、御国の来らんことを、御旨の天に行わるるごとく地にも行われんことを。▲われらの日用の糧を、今日われらに与え給え。われらが人に赦す如く、われらの罪を赦し給え。われらを試みに引き給わざれ、われらを悪より救い給え。アーメン。

(天使祝詞) めでたし、聖寵充ち満てるマリア、主御身と共にまします。御身は女のうちにて祝せられ、御胎内の御子イエズスも祝せられ給う。▲天主の御母聖マリア、罪人なるわれらのために、今も臨終の時も祈り給え。アーメン。

(栄唱) 願わくは、聖父と聖子と聖霊とに栄えあらんことを。▲始めにありし如く、今もいつも世々にいたるまで。アーメン。

 主われらをあわれみ給え。▲われらをあわれみ給え。
 願わくは死せる信者の霊魂、天主の御あわれみによりて安らかに憩わんことを。▲アーメン。

 ああ聖母よ、▲十字架にくぎ付けにせられ給える御子の傷を、われらの心に深く印し給え。


■第十留 イエズス衣をはがれ給う

 ああキリストよ、主は尊き十字架をもつて世をあがない給いしにより、われら主を礼拝し、主を讃美し奉る。

 ユデア人(びと)らはカルワリオにおいて主の御衣(おんころも)をはぎまいらせたり。その時御衣は御傷(おんきず)に付着して痛さに堪え給うべくもあらず、御頭(みかしら)のいばらの冠(かんむり)もさわりなりとて取り除(の)けしを、またもとの如く押しかむらせまいらせたり。そはいと苦しきことなれども、群衆の前にはだをさらさせ給いしは、なおこれにまさりて苦しげに見えさせ給う。

 ▲主イエズス・キリスト、御心(みこころ)に適(かな)わざることわれらにあらば、御衣(おんころも)の如く脱がしめ給え。わけても高慢、じやいん、どんよくなどの悪しき心を除き、聖寵の衣を着せ給わんことを、ひたすら願い奉る。アーメン。

(主祷文) 天にましますわれらの父よ、願わくは御名の尊まれんことを、御国の来らんことを、御旨の天に行わるるごとく地にも行われんことを。▲われらの日用の糧を、今日われらに与え給え。われらが人に赦す如く、われらの罪を赦し給え。われらを試みに引き給わざれ、われらを悪より救い給え。アーメン。

(天使祝詞) めでたし、聖寵充ち満てるマリア、主御身と共にまします。御身は女のうちにて祝せられ、御胎内の御子イエズスも祝せられ給う。▲天主の御母聖マリア、罪人なるわれらのために、今も臨終の時も祈り給え。アーメン。

(栄唱) 願わくは、聖父と聖子と聖霊とに栄えあらんことを。▲始めにありし如く、今もいつも世々にいたるまで。アーメン。

 主われらをあわれみ給え。▲われらをあわれみ給え。
 願わくは死せる信者の霊魂、天主の御あわれみによりて安らかに憩わんことを。▲アーメン。

 ああ聖母よ、▲十字架にくぎ付けにせられ給える御子の傷を、われらの心に深く印し給え。


■第十一留 イエズス十字架にくぎ付けにせられ給う

 ああキリストよ、主は尊き十字架をもつて世をあがない給いしにより、われら主を礼拝し、主を讃美し奉る。

 主はすでにくぎ付けにせられんと十字架の上に倒れ、御(おん)みずから御手足(おんてあし)を延ばし給いたるを、ユデア人(びと)らは荒々しくその御手足にくぎを押しあて、かなづちにて打ち付けたり。この時(とき)主の御(おん)苦しみはいかばかりなりしぞ。御肉(おんにく)は破れ、御血(おんち)は流れて御力(おんちから)尽き、なお御(おん)渇きは堪え給うべくもあらず。さるをユデア人らは少しも心せず、十字架を押し立て、根下(ねもと)を突き固めて立ち去りけり。聖母は始終これを見て涙にむせび、十字架のもとに留(とど)まり給う。

 ▲主イエズス・キリスト、主はわれらのために、十字架にくぎ付けにせられ給えり。さればわれらもまた、主と共に十字架に付けられんことを望む。たといいかなる苦しみに遭うとも、主を離れざるよう御(おん)恵みをくだし給わんことを、ひたすら願い奉る。アーメン。

(主祷文) 天にましますわれらの父よ、願わくは御名の尊まれんことを、御国の来らんことを、御旨の天に行わるるごとく地にも行われんことを。▲われらの日用の糧を、今日われらに与え給え。われらが人に赦す如く、われらの罪を赦し給え。われらを試みに引き給わざれ、われらを悪より救い給え。アーメン。

(天使祝詞) めでたし、聖寵充ち満てるマリア、主御身と共にまします。御身は女のうちにて祝せられ、御胎内の御子イエズスも祝せられ給う。▲天主の御母聖マリア、罪人なるわれらのために、今も臨終の時も祈り給え。アーメン。

(栄唱) 願わくは、聖父と聖子と聖霊とに栄えあらんことを。▲始めにありし如く、今もいつも世々にいたるまで。アーメン。

 主われらをあわれみ給え。▲われらをあわれみ給え。
 願わくは死せる信者の霊魂、天主の御あわれみによりて安らかに憩わんことを。▲アーメン。

 ああ聖母よ、▲十字架にくぎ付けにせられ給える御子の傷を、われらの心に深く印し給え。


■第十二留 イエズス十字架の上に死し給う

 ああキリストよ、主は尊き十字架をもつて世をあがない給いしにより、われら主を礼拝し、主を讃美し奉る。

 主は二人の盗賊の間に挙げられ給いしが、人々のために御父(おんちち)天主に向いて『かれらはそのなす所を知らざるによりて赦し給え』と宣(のたま)えり。一人の盗賊はこれを聞きて『願わくは御国(みくに)にいたらん時われを思い給え』と申したりければ、主は『今日(きょう)なんじ、われと共に楽園にあらん』と宣えり。また十字架のもとに聖母(せいぼ)及び御弟子(みでし)の立てるを見給いて、御母(おんはは)に向い『女よ、御身の子ここにあり』と、また聖ヨハネに向いては『なんじの母ここにあり』と宣い、やがて『事(こと)終りぬ』と宣いて、息(いき)終(た)えさせ給えリ。その時、日はなお高かりしが、世界にわかに夜の如く暗くなりぬ。

 ▲主イエズス・キリスト、主の死し給える時に当り、地は震(ふる)い、日は暗み、墓は開け、死人はよみがえり、岩は裂く。われらこれを思いて心にいたく感ずる所なくんば、きわめてかたくななる者なり。これによりて、今よりわれら再び罪を犯さず、主と共に、この世に死するを得しめ給わんことを、ひたすら願い奉る。アーメン。

(主祷文) 天にましますわれらの父よ、願わくは御名の尊まれんことを、御国の来らんことを、御旨の天に行わるるごとく地にも行われんことを。▲われらの日用の糧を、今日われらに与え給え。われらが人に赦す如く、われらの罪を赦し給え。われらを試みに引き給わざれ、われらを悪より救い給え。アーメン。

(天使祝詞) めでたし、聖寵充ち満てるマリア、主御身と共にまします。御身は女のうちにて祝せられ、御胎内の御子イエズスも祝せられ給う。▲天主の御母聖マリア、罪人なるわれらのために、今も臨終の時も祈り給え。アーメン。

(栄唱) 願わくは、聖父と聖子と聖霊とに栄えあらんことを。▲始めにありし如く、今もいつも世々にいたるまで。アーメン。

 主われらをあわれみ給え。▲われらをあわれみ給え。
 願わくは死せる信者の霊魂、天主の御あわれみによりて安らかに憩わんことを。▲アーメン。

 ああ聖母よ、▲十字架にくぎ付けにせられ給える御子の傷を、われらの心に深く印し給え。


■第十三留 イエズス十字架よりおろされ給う

 ああキリストよ、主は尊き十字架をもつて世をあがない給いしにより、われら主を礼拝し、主を讃美し奉る。

 主はすでに息絶えさせ給いしかば、御体(おんからだ)は十字架よりおろされ給えり。聖母マリアは御(おん)なきがらを抱(いだ)き給い、その御色(おんいろ)ざし、御顔(おんかお)、御手足(おんてあし)、および御脇腹(おんわきばら)の傷を見て、絶えいるばかり嘆き給う。

 ▲主イエズス・キリスト、かくも聖母を嘆かせまつりしは、すなわちわれらなり。ああ罪人(つみびと)なるわれら、いまさらに悔み悲しみ奉る。聖母はわれらのためにいつも母たり給えば、われらはいつも子となりて、忠実を尽すを得しめ給わんことを、ひたすら願い奉る。アーメン。

(主祷文) 天にましますわれらの父よ、願わくは御名の尊まれんことを、御国の来らんことを、御旨の天に行わるるごとく地にも行われんことを。▲われらの日用の糧を、今日われらに与え給え。われらが人に赦す如く、われらの罪を赦し給え。われらを試みに引き給わざれ、われらを悪より救い給え。アーメン。

(天使祝詞) めでたし、聖寵充ち満てるマリア、主御身と共にまします。御身は女のうちにて祝せられ、御胎内の御子イエズスも祝せられ給う。▲天主の御母聖マリア、罪人なるわれらのために、今も臨終の時も祈り給え。アーメン。

(栄唱) 願わくは、聖父と聖子と聖霊とに栄えあらんことを。▲始めにありし如く、今もいつも世々にいたるまで。アーメン。

 主われらをあわれみ給え。▲われらをあわれみ給え。
 願わくは死せる信者の霊魂、天主の御あわれみによりて安らかに憩わんことを。▲アーメン。

 ああ聖母よ、▲十字架にくぎ付けにせられ給える御子の傷を、われらの心に深く印し給え。


■第十四留 イエズス墓に葬られ給う

 ああキリストよ、主は尊き十字架をもつて世をあがない給いしにより、われら主を礼拝し、主を讃美し奉る。

 時にニコデモとヨゼフはピラトの許しを得て、主の御体(おんからだ)を葬らんと御母(おんはは)よりこれを受け、清らかなる布にて包み、新しき墓に葬り奉れリ。

 ▲主イエズス・キリスト、われらの罪を御墓(おんはか)に隠し給え。われら心のうちに、主を受け奉り、今よりこの世の楽しみに死し、天国において、主を讃美するを得しめ給わんことを、ひたすら願い奉る。アーメン。

(主祷文) 天にましますわれらの父よ、願わくは御名の尊まれんことを、御国の来らんことを、御旨の天に行わるるごとく地にも行われんことを。▲われらの日用の糧を、今日われらに与え給え。われらが人に赦す如く、われらの罪を赦し給え。われらを試みに引き給わざれ、われらを悪より救い給え。アーメン。

(天使祝詞) めでたし、聖寵充ち満てるマリア、主御身と共にまします。御身は女のうちにて祝せられ、御胎内の御子イエズスも祝せられ給う。▲天主の御母聖マリア、罪人なるわれらのために、今も臨終の時も祈り給え。アーメン。

(栄唱) 願わくは、聖父と聖子と聖霊とに栄えあらんことを。▲始めにありし如く、今もいつも世々にいたるまで。アーメン。

 主われらをあわれみ給え。▲われらをあわれみ給え。
 願わくは死せる信者の霊魂、天主の御あわれみによりて安らかに憩わんことを。▲アーメン。

 ああ聖母よ、▲十字架にくぎ付けにせられ給える御子の傷を、われらの心に深く印し給え。


■十字架の道行の後(のち)の祈り

 唯一の希望にして世の救いと栄えなる十字架を崇め奉る。願わくは熱心なる者はこれによりてますます聖寵を加えられ、罪人もこれによりてその罪を赦されんことを。▲救霊の源にまします三位一体(さんいいったい)の天主、願わくはすべての霊をして、主をほめたたえしめ給え。われらに十字架の勝利を与え給いしによりて、その報いをも得しめ給え。アーメン。

 ああキリストよ、主は尊き十字架をもつて世をあがない給いしにより、▲われら主を礼拝し、主を讃美し奉る。

 悲しみを極めませる聖母、われらのために祈り給え。▲キリストの御約束(おんやくそく)にわれらを適(かな)わしめ給え。

 主よ、われらの主イエズス・キリストは主の一族なるわれらのために悪人の手にわたされ、十字架の苦しみを受くるをいとい給わざりき。▲願わくは、主のこの一族を顧み給え。

 主イエズス・キリスト、活ける天主の御子(おんこ)、主は世をあがなわんがために十字架にくぎ付けにせられ、かつわれらの罪の赦されんために御血を流し給えり。▲願わくは、われらをして死後喜びて、天国に入(い)るを得しめ給え。

 主イエズス・キリスト、主の御苦難(ごくなん)の時に当りて、苦しみの剣(つるぎ)は御母(おんはは)なる童貞聖マリアの尊き御心(みこころ)を貫きたり。▲願わくは、聖母われらのために取り次ぎ、今も臨終の時も、いつも主の御(おん)あわれみを、われらのために求め給わんことをこいねがい奉る。アーメン。

 われらのためにむち打たれ、十字架を担い、これにくぎ付けにせられ給いしわれらの主イエズス・キリスト、われらを祝し給わんことを願い奉る。▲アーメン。




The Seven Sorrows of the Virgin. c.1496-1497 / Albrecht Durer


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